退職金は相続税の対象になるの? (第10表 退職手当金などの明細書)
退職金にも相続税がかかるときがあります。
お勤めをしていた方が亡くなり、お勤め先(会社等)から死亡退職金や功労金などが支給される場合。
残念ながら、お勤めをしていた方ご本人は、亡くなっているため受け取ることができません。ほとんどの場合、ご本人(被相続人)の代わりにご家族(相続人)が受け取ることになるかと思います。
そのため、退職金も相続財産とみなされ、金額によっては相続税の課税対象になることがあります。
ただし、生命保険金と同様に、非課税限度額が設けられています。
支払われる退職金等が非課税限度額内であれば、非課税。
限度額を超える分に対しては、相続税の課税対象。
ここでは、退職金が相続税の対象になるのはどのような場合か、書いていきます。
退職金も相続税の課税対象になることがある
この記事の冒頭にも書いたように、死亡退職金も相続財産とみなされ、金額によっては相続税の課税対象になることがあります。
国税庁のサイトには下記のように明記されています。
生前に退職し、退職手当等の支給も生前に受けた場合には、その金額に対して所得税が課されます。
しかし、 死亡後に支給される場合には所得税ではなく、相続税の課税対象になります。
具体的に、どのようなものが「退職手当等」に当てはまるのかというと
被相続人の死亡によって退職手当等を受け取る場合
・名目上は「退職金」でなくとも、実質的に亡くなった方(被相続人)の退職金等として支給されたもの
・お金だけでなく、現物での支給も「退職手当金等」に該当する
被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの
・死亡による退職で、退職手当金等の支給・金額が被相続人死亡後3年以内に確定したもの
・退職は生前だが、退職手当金等の支給・金額が被相続人死亡後(3年以内)に確定したもの
上記に当てはまるものは、相続財産とみなされ相続税の課税対象になります。
課税?非課税?退職金の非課税限度額を計算する方法
退職金は相続税の課税対象ではありますが、ある金額以下の場合には非課税になります。
いくら以下だったら相続税がかからないのか、非課税限度額は次の式で計算します。
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額
法定相続人の中に相続放棄をした人がいても、非課税限度額を算出するときには「相続放棄をしていない」ものとして扱うとのこと。
もし、相続をする法定相続人が2人、相続放棄をした法定相続人が1人、の場合、これらの相続人全員の数、つまり「3人」がこの場合の法定相続人の数になります。
したがって、このケースであれば、非課税限度額は 1,500万円 です。( 500万円 × 3 )
なお、非課税限度額を算出するときには、相続放棄をした相続人の数も含めましたが、非課税が適応されるのは「相続をする人」のみです。
で。
この非課税限度額は、相続人全体での金額です。
次に、それぞれの相続人に対して、非課税限度額がいくらで、課税される額はいくらになるかということを計算して出していきます。
それぞれの相続人について、非課税限度額と課税金額とを算出には次の式を使います。
(国税庁のサイト より、算式部分をキャプチャーしたものをお借りし、引用しています。)
各相続人の非課税限度額を出す式は、下の、赤枠で囲った部分。
各相続人の課税される金額を出す手順は次の通りです。
① その相続人が受け取った退職手当金等の金額
② その相続人の、退職手当金等についての非課税限度額
① − ② = その相続人の、課税される退職手当等の金額
実際に計算してみた
さきほどの式を使って、実際に非課税限度額を計算してみたいと思います。
退職金の支給が、申告期限までに確定しない場合は?
相続税の申告期限は、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」です。
しかし、なかには退職手当金の支給額がそれまでに確定しない、ということもあるのだそうです。
申告期限までに死亡退職金が支給されるか、いくら支給されるかが確定しない場合には、どのようにすればよいのでしょうか。
その場合には、ひとまず退職手当金等は「ない」ものとして、申告書を提出します。
そして、支給・支給額が確定したら、「修正申告」をします。
ただし、それは被相続人が亡くなってから3年以内に退職手当金等の支払いが確定した場合、です。
もし3年よりも後に、退職手当金等の支払いが確定した場合には、それらの金額は受け取った人の一時所得扱いになります。「被相続人の死亡後3年」を境に、相続税と所得税、課税の対象となる税が変わりますので注意が必要です。