シロウトに相続税の申告書作成は可能なのか

相続税の申告書を、経理の知識・経験はもとよりエクセルのスキルもろくに持ち合わせていなかったシロウトが8か月をかけて作成し、所轄の税務署へ提出。その経験をとおして知ったことや感じたことを綴るブログ。

シロウトに相続税の申告書作成は可能なのか

【法定相続情報証明制度】どこで、どんな手続きが必要?メリット・デメリットは?

 

この記事では、「法定相続証明制度」について書いています。

金融機関などで相続の手続きをするときに、提出してくださいといわれる戸籍。

人によっては、戸籍だけでもかなりの分量になることもあります。

たとえば被相続人が複数の銀行に口座をもっていた場合、銀行の数だけ戸籍を取得するのも手数料がかなりかかります。

戸籍を1部ずつ取得して、それで手続きをすることも可能ですが、一つの銀行でおおよそ半月から一月くらいはかかることを考えると、時間もかかってしまいます。

しかし、「法定相続証明制度」を利用すれば、「法定相続情報一覧図の写し」の交付が受けられます。しかも無料で。

この「法定相続情報一覧図の写し」が、戸籍の束の代わりになるのです。

ただ、「法定相続証明制度」を利用するには、法務局で手続きをする必要があります

亡き母の相続手続きにあたって、わたしも法務局で「法定相続証明制度」の手続きをして、「法定相続情報一覧図の写し」を交付してもらいました。

その経験を踏まえて、この制度の利用方法やメリット・デメリットについて書いていきたいと思います。

「法定相続情報制度」手続きの流れ

 

「法定相続証明制度」を利用するための手続きは、およそ以下のとおりです。

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①手続きに必要な書類を用意する

「法定相続証明制度」の手続きに必要な書類は次のとおりです。

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上記の他に、場合によっては
・各相続人の住民票の写し
・委任状
・戸籍の附票
被相続人の親等にかかわる戸除籍謄本
・返信用封筒と切手(郵送での受け取りを希望する場合)
などが必要になることもあります。 

  必ず用意する書類/必要となる場合がある書類  

「出生から死亡までの連続した戸籍謄本」の入手方法については、こちらの記事もご参照ください。

戸籍の集め方①  
戸籍の集め方②  
戸籍の集め方③  

②法定相続情報一覧図を作成する

法定相続情報一覧図は、被相続人と全ての相続人を一覧にしたものです。

A4の用紙に下のような内容を書きます。

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「~法定相続情報証明制度について~」
http://www.moj.go.jp/content/001222823.pdf) p.3 別紙1 より

 

(1) A4用紙の1行目中央に「被相続人○○○○法定相続情報」と書きます。

「○○○○」の部分には、亡くなった方(被相続人)の氏名を記入してください。

(例)被相続人の氏名が「田中一郎」さんだったら、「被相続人田中一郎法定相続情報」と記入します。

(2) 被相続人について記入します。

被相続人の氏名を書き、その上に、次の4項目を書きます。

 ・最後の住所
 ・最後の本籍
 ・出生年月日
 ・死亡年月日

(3) 被相続人の配偶者について記入します。

被相続人に配偶者がいる(存命している)場合には、被相続人の下側に次の4項目を書きます。

 ・被相続人の配偶者の住所
 ・被相続人の配偶者の出生年月日
 ・被相続人との続柄
 ・配偶者の氏名
※配偶者がいない場合、また結婚はしているけれど配偶者が被相続人よりも先に亡くなっている場合には、この(3)は省略して(4)を記入します。

(4) 被相続人の子について記入します。

被相続人に子がいる場合には、被相続人被相続人の配偶者との間に二重線を結び、右側にそれぞれの相続人(=子)について次の4項目を書きます。

 ・相続人の住所
 ・相続人の出生年月日
 ・被相続人との続柄
 ・相続人の氏名

(5) 被相続人に配偶者も子もいない場合、被相続人の父母、もしくは祖父母(被相続人の父母が亡くなっている場合)について記入する。

(6) 被相続人に配偶者も子も、父母・祖父母もいない/存命ではない場合、被相続人の兄弟姉妹について記入する。

被相続人の配偶者・子がいる場合には、(5)・(6)について書く必要はありません。(4)までを記入します。
※ 相続人の住所については任意記載なのだそうです。 つまり、記入してもしなくてもどちらでも構わない、ということのようです。
※住所を記載する場合には、法定情報一覧図には住民票に記載されているとおりの書き方で書く必要があります。また、法務局に提出する書類に、相続人全員の住民票の写しが必要になります。

(7) 作成日と作成者氏名を記入し、押印する。


 

法定相続情報一覧図を作成するための、指定の作成用紙はないようです。

上記のような書き方・内容で自作し、添付書類とともに法務局へ提出します。

法務局のサイトに記載例と様式が公開されていますので、それをもとに作成していかれることをおすすめします。
主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例:法務局  

③申出書を作成する

申出書は法務局のサイト  からダウンロードすることができます。
(申出書の入手はこちら  のリンクから)

下記のような書面がダウンロードされます。

ワード形式で、ダウンロードした書面に直接書き込みができます。便利。

必要事項を入力して印刷したものに押印すれば、そのまま提出が可能です。

申出書の記入例は、こちら  で確認できます。

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「申出先登記所の種別」は、

被相続人の本籍地
被相続人の最後の住所地
・申出人の住所地
被相続人名義の不動産の所在地
上記の4つのなかから申出書および添付書類を提出する先を選び、チェック を入れます。

申出人となるかたが、手続きをしに行くのに便利なところを選ぶがおすすめです。
  管轄のご案内:法務局

④法務局で申出の手続きをする

申出書に記入した法務局へ出向き、申出を行います。

持参するのは

・申出書
・法定相続情報一覧図
・戸籍謄本などの添付書類(①で用意したもの)
です。

念のため、

・添付書類で用意した、申出人の身分証明書の原本
・申出書に押印した、申出人の印鑑
も一緒にもっていっておくと安心です。

窓口で登記官のかたが、提出書類に不足等がないか確認をしてくれます。

問題がないようでしたら、預り証を発行してくれます。受け取りの際に必要になるので大切に保管をしておくようにしましょう。

もし書類に不足などがあった場合でも、登記官のかたが、何をどのようにすればよいのか丁寧に教えてくれます。

我が家の場合…
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍で、亡き母にとって一番はじめの戸籍にあたるものが不足していたため、登記官の方から連絡がありました。

金融機関での相続手続きでは、被相続人の「生まれてから亡くなるまで」の戸籍は、おおよそ「被相続人が16歳の誕生日以降から亡くなるまでの戸籍」によって亡くなった方の法定相続人が確認できるようであれば、解約・払戻等の対応をしてくれる(こともある)ようです。

しかし、法務局では厳密に、まさしく「被相続人が初めて戸籍に名前が記載されたときから亡くなるまで」の連続した戸籍を提出する必要があります。

そのため、我が家のように、せっかく全部集まったと思ったのに更に戸籍の収集に奔走することになる…というケースもあるかもしれません。

しかし、もし必要な戸籍が揃っていなかったとしても、登記官の方が教えてくれるのでありがたいですね。
教えてもらった役所に被相続人の戸籍を請求し、追加で提出したら、無事に「法定相続情報一覧図の写し」を交付してもらうことができました。

法定相続情報一覧図の写しの交付と、戸除籍謄抄本の返却は、法務局に出向いて窓口で受け取ることもできますし、郵送での受け取りも可能です。

郵送を希望する場合には、申出のときに、返信用の封筒に切手を貼ったものを一緒に提出します。

「法定相続情報制度」メリットとデメリット

法定相続情報制度の一番のメリットは、相続の手続きのたびに戸籍の束をもっていかなくてよいことです。

一覧図の写しがあれば、金融機関でも、土地の相続登記でも、手続きをすることができるので、高い手数料を払って何部も戸籍謄本をとらなくても済みます。

しかも、法定相続情報制度を利用する手数料は無料!ありがたい!

銀行の相続手続きや不動産の相続登記など、手続きをする先が多い場合には、法定相続情報制度を利用し、法定相続情報一覧図の写しの交付を受けておくと、全体の手続きがよりスムーズに進むと思います。

戸籍の束が返却されてくるのを待たなくても、同時に複数の先で手続きを進めることができて、とても便利です。

デメリットは、申出のための準備で大変なところがあること、でしょうか。

被相続人の戸籍謄本や相続人の戸籍謄抄本をとること自体は、法定相続情報制度を利用するしないにかかわらず行うことだと思いますので、その手間は変わらないかもしれません。

ただ、法定相続情報一覧図の作成をしたり、申出の手続きのために法務局まで出かけていったり、といった手間は必要になります。

もちろん、司法書士や弁護士、税理士など専門家に申出の代行を依頼することも可能です。

しかし、できるだけ費用をおさえたい、自力で手続きをしたい、という場合には、ある程度、時間だったり頭をつかうことだったりが必要になる、ということはあるかもしれません。

なお、法定相続情報一覧図の写しは、相続税の申告でも使えます。

銀行での相続手続きだけでなく、不動産や有価証券などの相続手続きもあるなど、手続きを行う先が多くある場合には特に、(多少の手間はかかりますが)法定相続情報制度を利用することをおすすめします。